2010年12月31日金曜日

人間の勝利 山村暮鳥の詩


 人間の勝利
 
 人間はみな苦しんでゐる 
 何がそんなに君達をくるしめるのか 
 しつかりしろ 
 人間の強さにあれ 
 人間の強さに生きろ 
 くるしいか 
 くるしめ 
 それがわれわれを立派にする 
 
 みろ山頂の松の古木を 
 その梢が烈風を切つてゐるところを 
 その音の痛痛しさ 
 その音が人間を力づける 
 人間の肉に喰ひいるその音(ね)のいみじさ 
 
 何が君達をくるしめるのか 
 自分も斯うしてくるしんでゐるのだ 
 くるしみを喜べ 
 人間の強さに立て 
 恥辱(はぢ)を知れ 
 
 そして倒れる時がきたらば 
 ほほゑんでたふれろ 
 人間の強さをみせて倒れろ 
 一切をありのままにじつと凝視(みつ)めて 
 大木のやうに倒れろ 
 
 これでもか 
 これでもかと 
 重いくるしみ 
 重いのが何であるか 
 息絶えるとも否と言へ 
 頑固であれ 
 それでこそ人間だ
 
 
 

Posted via email from 美味くないものを食べるほど、人生ヒマじゃない

0 件のコメント:

コメントを投稿